あらひろこさんは北海道出身の日本人カンテレ奏者であり、カンテレ演奏の教師であり、作曲家でもあります。あらさんの最新のアルバムは2016年発売の『Birds and The Tree』です。これはあらさんの3枚目のアルバムであり、最初のアルバム『Garden』は2004年に発売され、2007年には2枚目のアルバムである『Moon Drops』が発売されています。ソロ活動に加えて、あらさんの演奏は「Raumaラウマ」という、あらさんのカンテレと嵯峨治彦(さがはるひこ)さんの馬頭琴を合わせたデュオなどで聞くことができます。
新しいCDではあらさんはソロで39弦コンサートカンテレや11弦小型カンテレを演奏しています。アルバムはあらさん自身の作曲の曲とフィンランド、スウェーデン、モンゴル、イギリスの伝統的な民族音楽の曲で構成されています。CDにはフィンランドのカンテレの象徴である、マルッティ・ポケラの作曲の曲も1曲、含まれています。また、このCDのタイトルである『Birds and The Tree』は即興(インプロビゼーション)で演奏される組曲の主タイトルにもなっています。この組曲の一部にははっきりと古いフィンランドの小型カンテレ演奏の伝統の影響を聞くことができます。このCDは音楽の世界でのカンテレのさまざまな可能性を、とても幅広く聞かせてくれています。
CDの全体を通して、カンテレの魅力的な透き通った音色が音楽の中心となっています。 カンテレ自体が本来持っている聞く人を惹きつける力を、こんなにも深く信頼する勇気を持った音楽を聞くことは、とても素敵な、気持ちの良い経験です。このCDが聞かせる音楽は美しく、細い水の流れのように穏やかに進み、情感豊かです。あらさんの演奏のタッチは、柔らかく落ち着いていて、聞く人は音楽に浸りきることができ、繊細な雰囲気を楽しむことができます。
このCDを聞けば、あらさんのカンテレに対する関心の深さと愛情をすぐに感じ取ることができます。演奏家自身がこのカンテレという楽器にとても深く魅了されているということ。それは、あらさん自身の音楽と、その音楽に自分を深く入り込ませることから生まれているものなのでしょう。それは、このCDに心地よく聞くことができます。
(文:Hanna Ryynänen ハンナ・リューナネン日本語訳:大谷千冬)