「エンケル」は4人の民族音楽のミュージシャンによって構成されるグループで、フィンランドの伝統的な民族音楽に加えて、その伝統を踏み台とした、グループのメンバー達のオリジナル曲を演奏しています。「エンケル」では、ミーア・パロマキとレイヤ・ラウタマヤが2列半のボタン式鍵盤のアコーディオンを演奏し、イーダ・サヴォライネンがアルトヴァイオリンを、マイヤ・ポケラが15弦カンテレを演奏しています。「エンケル」は2016年にデビューアルバム『Pappilan hääyö – Wedding Night At The Vicarage(牧師館のウエディングナイト)』を発売しており、今回発売された『We Are ENKEL』はこのグループの2枚目のフルアルバムとなります。
この『We Are ENKEL』のCDを聞けるようになる前に、2018年7月にラーッキュラ(フィンランド南東部、北カリヤラ県の町)のキハウス民族音楽フェスティバルでこのグループの演奏を見聞きすることができたのは、喜ばしいことでした。その演奏は、私のこのCDに対する期待を大いに高めました。なぜなら、このグループの演奏は、全体の信頼性と安定性の高さによって、私の心に2018年の夏に私が聞いたコンサートの中で最高のものの一つとして残っていたからです。
同様の信頼性の高さと本物さは、このグループの新しいフルアルバムでも、しっかりと聞くことができます。『We Are ENKEL』は、踊りだしたくなるような、エネルギーを与えてくれるような民族音楽にあふれています。このグループのメンバー達の、フィンランドの民族音楽の伝統に対する愛情と尊敬が聞こえてくるようです。スーパーヒーローをテーマとしたCDのブックレットでも、このグループは自分達のスーパーパワーは「伝統」であるとアピールしています。伝統に沿うことに加えて、「エンケル」の音楽は、また、とても独自性があり、革新的です。それはグループの演奏にも、楽曲の編曲の仕方にも、CDのビジュアル面の表現にも、見聞きすることができます。
このCDでのカンテレの役割は主に伴奏ですが、マイヤ・ポケラのカンテレのリズミカルなコード伴奏の正確さと多彩さは、少なくとも私がこれまで聞いたことのない何かでした。カンテレの多様な可能性と、コード伴奏をする楽器としての様々に異なる役割を追求するために、マイヤ・ポケラがとても多くの労力を費やしたことは、このCDを聞けばすぐに分かります。このマイヤ・ポケラの仕事のおかげで、私達は今、カンテレを以前とはまた少し異なった音楽の中で聞くことができます。
このCDは、長い間に発売されてきた民族音楽のCDの中で最高のものの一つだと言うことができるでしょう。皆さんにエンケルの音楽と知り合ってみることを心からおすすめします。ゾクゾクと体の毛を逆立てさせると同時に、口元に笑みを浮かべさせるものは、このCDでないとしたら、一体、何があるでしょう。――ありがとう、エンケル!
(文:ハンナ・リューナネン 日本語訳:大谷千冬)